熱収縮チューブとは?各種電線、部品の絶縁や保護の他、防水・防蝕、機械的保護にも使える!


熱収縮チューブとは
放射線高分子化学のパイオニアRaychem(以下、レイケム)で開発された電子線架橋の熱収縮チューブは、熱を加えることにより、あらかじめ記憶させた形状に収縮する形状記憶のプラスチックチューブです。
ポリオレフィン、フッ素ポリマー、あるいはエラストマー材料に放射線架橋することにより、熱収縮特性を付与して作られています。チューブを取り付け、加熱することにより被せられた相手の材料の形に合わせてどのような形にも収縮します。
熱収縮チューブを開発したレイケムとは
電気エンジニアのPaul Cookによって1957年に設立されたレイケムは、「放射線化学」と呼ばれる新しい科学分野を利用して製品を開発した最初の会社でもあります。創業者Paul Cookは、この架橋プロセスによって材料を加熱し、伸ばし、冷却して、元のサイズになるまで再度加熱すれば、優れた絶縁と保護が実現するということを発見し、それが結果として熱収縮チューブの採用につながり、他に先駆けて数多くの製品が開発されました。
現在はTE Connectivity(以下、TE社)のレイケムブランドの製品シリーズとして、高レベルのサービス、品質を提供しています。
熱収縮チューブ使用用途
- 各種電線、部品の絶縁・保護
- 防水、防滴
- 防蝕
- 機械的保護
- 美観向上や識別用途など
採用例:集中ジョイントの防水、ホースの保護、蛍光灯のバルブのカバー、コンデンサーコイルの腐食防止、アンテナカバー、基板の保護、カテーテル・・・など
熱収縮チューブの種類
一層、二層、ヘビーデューティ、特殊チューブ、医療用など様々な種類がありますが、今回は「一層」と「二層」構造の熱収縮チューブ特長について簡単にご紹介します。
一層熱収縮チューブ
薄肉、中肉厚、肉厚の3タイプがあります。絶縁、ストレインリリーフ、ならびに機械的損傷および摩耗からの保護において優れています。
二層熱収縮チューブ
高度な接着剤の使用により、湿度と腐食環境から保護すると同時に、電気絶縁と機械的保護を実現します。腐食防止とシーリングが必要な場合に最適です。
内側の層に包埋剤または接着剤を使い、加熱中に融けて流れ出し、耐環境性能を向上します。
包埋剤は、水がかかったり腐食したりする環境からコネクタや部品を保護します。
接着剤は、プラスチック、金属、ゴム、あるいはそれ以外の基板に対する防水性を得ています。
選定、作業プロセスでの注意点
サイズ選定の目安
チューブを選定する際は、用途に合うサイズ、タイプ、厚みに注意が必要です。
サイズ選定の目安としては、完全収縮後の内径が、被覆対象物の直径よりも、やや小さくなるようなチューブを選定してください。
収縮前後のサイズについて
参考資料:TE Connectivity「熱収縮チューブプロダクトガイド」
カット時のポイントと注意点
チューブをカットする際は、チューブに傷をつけないように注意してください。カット面に傷がつくと裂けやすくなることがあります。また、できるだけ一工程(一度)でカットしてください。
加熱でのポイントと注意点
もっとも一般的なのが工業用ドライヤーなどで直接加熱する方法ですが、量産などの場合は、ベルトコンベアオーブンなどの高温の雰囲気中で加熱する方法もあります。
加熱の際は、チューブ内に空気が残らないよう、チューブ中央から両端に向かって収縮させてください。特に長いチューブや接着剤付きの収縮製品を熱風機器で収縮させる場合に有効です。
縦方向の収縮変化率が気になる場合は、チューブの両端を加熱してから、次に中央を収縮させると縦方向の収縮を抑えることができます。
収縮温度と加熱時間
TE 社のカタログ中に示す収縮温度は熱収縮チューブ自体の温度を示しています。加熱温度はそれよりも高いものが必要になります。
収縮は加熱温度と加熱時間が関係しますので、被覆される対象物と加熱の影響を受ける電線、部品などの耐熱温度に注意してください。
また、対象物の比熱や熱伝導率の違い、または周辺温度によっても必要な加熱時間が変化します。
製品紹介
今回は難燃性・柔軟性に優れた「Versafit V2」と、防滴・防水に優れた「ATUM」をピックアップしご紹介いたします。
難燃性と柔軟性でお探しなら「Versafit V2」
「Versafit V2」は、一般民生から自動車用市場まで幅広いマーケットの要求仕様を満たすパフォーマンスの高い製品です。ワイヤハーネスの接続箇所の絶縁、補強、電線の結束および各種部品の保護等幅広い用途に適しています。高い難燃性を有しており、また高温環境においても優れた柔軟性を発揮します。
- 材質
- 放射線架橋ポリオレフィン
- 収縮温度
- 90℃以上
- 収縮比
- 2:1
- 連続使用温度
- -30~125℃
- 縦方向収縮率
- +1%、-5%(ASTM D2671)
±3%(UL224)
- 規格
- UL224 認定番号(File No.)E35586 温度定格125℃、電気定格600V、難燃グレードVW-1
CSA 認定番号(File No.)LR31929 温度定格125℃、電気定格600V、難燃グレードVW-1
電気用品安全法 電気用品部品 材料任意登録制度
有機絶縁物類上限値試験 登録温度125℃(登録番号168AC0683)
防滴や防水でお探しなら「ATUM」
「ATUM」は、ハーネス分岐部、コネクタバックエンドの防滴または各種電子部品の防水に最適で、ハーネスの絶縁、保護等に利用されています。
収縮比率は、3:1と4:1の2つのバラエティーを揃えており、大口径を必要とされるアプリケーションにも対応でき、民生から防衛まで産業までカバーできる規格を満足する優れた製品です。
- 材質
- 二層構造放射線架橋ポリオレフィン
- 収縮温度
- 110℃以上
- 収縮比
- 3:1、4:1
- 連続使用温度
- -55~110℃
- 縦方向収縮率
- -15%(ASTM D2671)
- 規格
- UL224 認定番号(File No.)E85381 温度定格110℃、電気定格600V(黒のみ 3/1、4/1 除く)
Military Spec SAE-AMS-DTL-23053/4 (3/1、6/2、12/4、24/8、40/13 のみ)
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回ご紹介した「Versafit V2」と「ATUM」以外にも熱収縮チューブは種類が豊富で、用途によってお選びいただけます。熱収縮チューブについてご興味のある方、ご質問のある方は、お気軽に高木商会にお問い合わせください。