タッチパネルの基礎(投影型静電容量方式)


投影型静電容量方式タッチパネルは、スマートフォンやタブレット端末などの民生機器に採用されていることから、現在世界で最も普及しているタッチパネル方式といえます。
投影型静電容量方式タッチパネルが可能にする、軽い操作感やフリック(払い)、拡大/縮小、回転などのジェスチャー操作は、それまでになかった革新的な操作感をユーザーに与え、昨今のスマートフォンの普及に大きく貢献したことは間違いありません。
こうした投影型静電容量方式タッチパネルの操作感が、民生機器を中心に益々一般的になっていくに従い、産業・業務用途においても当該方式の需要が徐々に増えつつあります。
しかしながら一方で、投影型静電容量方式のタッチパネルは、その検出原理から「環境ノイズの影響を受けやすい」特性を持っており、産業用途においては、採用のハードルは高いとされています。
投影型静電容量方式タッチパネルとは
正確な多点検出(マルチタッチ)を可能にし、軽い操作感やフリック、拡大/縮小、回転などのジェスチャー操作に適しています。1点押しに比べ、操作の幅が広がります。
投影型静電容量方式の検出原理
投影型静電容量方式タッチパネルの一般的な原理としては、電極がマトリクス状に形成されており、隣り合う電極同士は、容量結合をしています。(図1)
指などの導電性物質が電極に近づくと、指と電極間に容量結合が発生し、電極間同士の容量結合値が変化します。この変化したところを、タッチ位置として検出しています。(図2)
ノイズの影響について
前述のとおり、投影型静電容量方式タッチパネルは、パネルをタッチした時のパネル上の容量変化を検知しますが、実際には指以外の様々な環境要因によっても、容量値変化は発生します。
例えばタッチパルの電極が、周辺の液晶外周フレーム筐体ベゼルと容量結合を起こしてしまい、容量変化が起こってしまう場合がありますし、液晶から発生する電磁ノイズも容量変化を引き起こす要因になります。
また、周囲の温度/湿度などの変化によっても、容量変化が影響を受ける場合もあります。こうした様々な環境要因により静電容量は影響を受け、タッチがうまく効かない場合があります。
DMCのノイズ対策
コントローラ調整サポート
DMCはこうしたノイズの問題に対応するため、タッチパネルセンサだけでなく、実際に容量変化を検知し、タッチ出力を行うタッチコントローラも自社で開発を行いました。(図3)
DMC社製のタッチコントローラをご採用いただくことで、使用環境のノイズ状況に合わせたコントローラの調整サポートを提供することが可能になっています。
調整サポートとは、実際の使用環境でノイズの影響を受けないよう、様々なコントローラの設定を行うことです。
例えば、ノイズ対策の設定の一つとして、実際にタッチパネルが使用される環境において、タッチしている時/していない時、それぞれの容量変化量を観測し、タッチ時の容量変化量のみ、タッチ判定を行うように設定します。(図4)
この他にもノイズの特性によって、様々なノイズ除去の設定を行っています。
また、パネル上に水(水は容量変化を引き起こします)が、かかるような使用環境では、アルゴリズムにより、水による容量変化を検知し、誤動作を引き起こさないよう、水がなくなるまでは水が存在するエリアのタッチ出力を止めるといった調整も行っています。(図5)
まとめ
他のタッチパネル方式と比較し、ノイズの影響を受けやすいことから、投影型静電容量方式タッチパネルの産業・業務用途への導入は、手間がかかります。
しかし、製品開発時にノイズ対策をしっかり検討・実施すれば、安心してご採用いただくことができ、現代的でスマホライクなユーザーインターフェイスを実現することが可能です。
これから投影型静電容量方式タッチパネルの導入を検討している方、またどのように投影型静電容量のノイズ対策を行ってよいかわからない方は、お気軽にDMCまたは高木商会営業までご相談ください。
※株式会社ディ・エム・シーよりご寄稿いただいた原稿をもとに、高木商会が一部編集をいたしました。